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将来新潟に還りたい夫婦の生活記録

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笑顔と絶望とほんの少しの希望を~The View Upstairs 観劇感想~

こんにちは、ヨメです。

本日は、先日観劇してきたミュージカル

「The View Upstairs -君が見た、あの日-」

の感想などなど、綴っていきたいと思います。

感想なのでネタバレを大いに含みます、注意してね。

 

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2019年"舞台鎧武"ぶりの、日本青年館ホールです!!

 

あらすじや公演情報は、こちら公式HPへ↓

theviewupstairs.jp

 

 

 

全体の感想、所感

初見、見終わってまず出てきた言葉

「地獄だ……」

これはまぁ内容的に分かっていたことですが、結末が悲しすぎて出てきた言葉です。

なんなら「その地獄を見に行ってたんやろがい!」みたいなね……。

 

主人公のウェスが70年代のゲイバー「アップステアーズ・ラウンジ」へタイムスリップし、そこである青年 パトリックと(なんやかんやありつつ)恋に落ちるも、アップステアーズは放火により火の海へ…

ウェスくんはわけが分からず、「何が起こっているの?」と。

パトリックにより、火事の詳細な様子――アップステアーズの仲間たちが、逃げ惑う様子、最期を悟る様子、燃えて焼けていく様子、そして消火され遺体になってもなお、ゲイとして差別され続ける様子――それらがゆっくりと、語られるのです。

何がしんどいって、これらは実話に基づいた話なんですよね。

(内容詳細を参照したい方はこちらをどうぞ!↓)

honyakumystery.jp

 

"当時ひどい同性愛者差別があった"というのは、百歩譲って分かるとして…

ウェス「今の世の中も、何も変わっちゃいない」

「10代の子供が死ぬまでいじめられるし」「セクシャルマイノリティの人が夜道で突然襲われたりするし」(記憶があやふやなのでだいたいこんなかんじ、です)

――と、ウェスくんが言うように、多少世の中の理解は進んではいるものの、そういう根深いところにある差別って、まだまだ存在するわけです。

そういう事実と、かつてあった残酷な事件にやられて、私はどうしようもない気持ちになりました。差別、無くならないじゃん…人類って愚か…。悲しい、というか、やるせないというか…どうしたらいいんだろうね…。

 

でもこの悲しくてしんどいところって、公演時間2時間15分のうち、おそらく最後の10分15分でしかないんですよ…笑

その他の2時間は、アップステアーズラウンジで生きる仲間たちとウェスくんが親交を深めていきつつ、ウェスとパトリックが愛を深めていく様子が描かれます。

 

登場人物みんながどこか憎めなくて素敵でいい奴らです。

そしてどのミュージカルナンバーも素敵。途中にめちゃくちゃ楽しい曲入れてきたり……!

火事が起きるまでにいろんな伏線や、"差別"に関する色々考えさせられる話がありつつ、最後は大きなものを見る側に投げかけて終わる…。

なんというか、「あぁ、そうだわ~これアミューズ制作だもんね~」とニッコリしちゃうミュージカルでした!!(??)

ピノキオとかブラホワとか…そういう風味を感じました…(ざっくり)

 

ストーリーに込められた"差別"の話

重い話が続きますが、この話題なくしてTVUは語れないでしょう、ということで。

このお話の中では「世間→同性愛者」という差別が大きく取り上げられていますが、それだけじゃないよね、という話。

 

登場人物の中の一人「デール」は、アップステアーズの中でも一人だけなんとなく浮いていて、皆から腫れ物に触るような扱いを受けています。

彼は寝泊まりするところがなく、定職にも就いておらず、身体を売ったりしてなんとか生き伸びる日々を過ごしています。

彼の振る舞いを見ていると、皆と仲良くしたくて(見てもらいたくて、認めてもらいたくて)、"何か"を与えようと必死なのですが、その"何か"は大抵場違いでズレているので、逆に雰囲気が悪くなってしまうんですよね。

(色んな意味で辛くなったのは私だけじゃない…と思いたい…)

 

そんなデールくん、たぶん考え方・主張だけを取り上げると、ウェスくんとすごく似ている…と思いませんか?

  • 仲間に暴力を振るう警察に対して「そんな振る舞いはおかしい、やり返す(声をあげる)べき」
  • 難病の子どもたち(?)のために募った寄付金に対して「どうしていつも俺たちの方から寄り添わなくちゃいけないんだ」
  • 「みんなに見てほしい、認めてほしい」という願望

確かに最初二点については、現代的 ≒ 当時で言えば異質な考え ですから、皆から煙たがられ、「面倒なやつ」扱いされるのもまぁ理解できるんですよね。ウェスくんは作中では"この辺りのしきたりをよく知らない新入り"という扱いをされるので、一応許されていますが…。

 

ところがデールくんは、日々の振る舞いや、周囲から見た「だらしない人」という印象、コミュニケーション力の欠如等(ウェスくんにはない要因たち)――いろんな要因が重なってしまって、アップステアーズの仲間から距離を置かれているのかな、と思ったりしました。

体よく言えば「距離を置く」かもしれませんが、言ってしまえばこれは「差別」です。

 

「あいつはだらしないから、仕方ない」

「あいつは気違いだから、仕方ない」

……本当に仕方ない?

"距離を置いているだけで、差別じゃない"? デールはこんなに苦しんでいるのに?見て見ぬ振りして、本当にそう思っている??

 

でもね~、悲しいかな、分かるんですよねこの気持ち。差別する側もされる側も、どっちの気持ちも。

 

アップステアーズの人たち「あいつが悪いんだから、差別されて当然、仕方がない」

デール「どう頑張っても、みんなは俺を見てくれない」

でもそれって、

世間「同性愛者なんてオカシイ人たちだから、差別されて当然」

同性愛者「どう努力しても認められない、侮辱されてしまう」

と同じ構図ですよね。えっ、怖い…。

 

現代で暮らす中、セクシャルマイノリティだけでなく、色んな人と関わる機会があります。そんな中で、無意識に差別してないか?と問われれば私は「していない」とは言えません。お恥ずかしい話ですが。

この作品に、「どうなの?」と改めて問われた気持ちです。生きるってしんどいですね…。

 

これは、分かっているけど難しいよね…みたいな話ですが…。

「どんな性的嗜好や、考え方、性格、身体的特徴があったとしても、人は皆平等に扱われるべきだし、区別はあっても差別されてはいけない」

幼い頃から何度も刷り込まれ、頭では分かっている事実ですが、これを実践するのって難しいですよね。

終盤のシーン、ウェスが「何も変わらない」と泣きながら絶望するシーンは、とっても共感してしまいます。

でも、パトリックはそれを遮るように「でも、君は変わった」と。

"お金や数字に捕らわれていたウェスは、もっと大事なことに気付けるようになったんだから。"

"君が変わってくれたことが、未来への一つの希望なんだよ"

そんな風な、パトリックからのメッセージを感じさせます。

一言で「変わる」といっても難しいですが、

"「難しいから諦めた!」とはならずに、皆で藻掻いていこうね"、

みたいなメッセージを作品を通して受け取りました。

…皆さんは、どう受け取りましたか?

 

濃いキャラクターたちと好きなシーンの話

ウェス

いや~、「アミューズありがとう(拍手)!」となったキャスティングでした。

平間壮一さん主演でこの役どころ、このストーリー、流石だなぁ、と。

"現代を生きる若きファッションデザイナーのゲイ"という役どころらしいですが、

(なんか最初に発表された頃はノンケだった気がするんだが気のせいかな?いつの間に変わった??)

ちゃんとコロナ禍のストーリーになっていて感動しました!(今更)

マスクをして登場するシーンとか、「こんなパンデミックの最中に物件を購入するやつがいるか!」というセリフとか。

 

また、Instagramのフォロワーを気にする様子や、"フォロワー数、お金、数字こそが全て"という思想は、とても「今の時代」だなぁと思いました。2022年じゃなきゃいけない意味、わかる。

彼がそんな「数字」に囚われ、パトリックから不思議に思われる様子を見て、自分を振り返るキッカケになったり。情報や目に見えるものに一生懸命になりがちだけれど、もっと目の前にある幸せを、大事にできたらいいんだろうなぁ…。

 

そして短めの髪型やヒール付きのブーツでオカマ仕草、ということで!!これはもうRENTのエンジェルを彷彿とさせる!!!!興奮しました。かわいい。そしてこの衣装でダンス。…ありがとうございます。so cute…

 

パトリックとの絡みもめちゃくちゃ可愛かったなぁ…!!

他の人がメインのシーンで、二人が一緒の椅子に座ってイチャイチャしてたりすることが多々あったと思うのですが…幸せそうに指を触り合ったり、座りながら首をなでたり、本当に仕草が恋人同士!幸せ空間!で眼福でした。可愛いのよ~…。

 

パトリック

小関のゆーたくん、どちらかというと"ふわっ"とした雰囲気のイメージの方が強いのですが、今回は妖艶で儚さを含んだ役どころ、見事に演じきっていました。色っぽいのよ~…。

当時の独特の(?)服装も着こなしちゃうし、スタイルの良さよ…いや知ってたけど…

 

ちょっと自由奔放で気ままなイメージは、ゆーたのイメージにとても近くて、パトリックのテーマ曲もまるで本人みたいだな~!と思ったり。

でも、そんなピュアなイメージだけじゃなくて、パトリックが持つ心の暗いところを反映させた歌い方・演技は、流石だな、と感じました。何気にゆーたの演技見るのは初めてでしたが、一気に次の"四月は君の嘘"も楽しみになりました!!!

 

ダディ

畠中さん、昨年10月~11月の「Octobersky」に引き続き見ることになるとは…!

オクトーバーの時の"無骨で男らしい男!"から打って変わって、妻子持ちで自身の性的嗜好を隠して生きている"クローゼット"ゲイという役どころでした。

 

ダディは一般人に紛れて生きているため、アップステアーズの中では人一倍「平穏に過ごす」「波風立てない」ことに過敏です。もっとも、今までそうやって生きてきたし、そうしないと生きてこれなかったことは、容易に想像ができます。

でも、そんな彼が、乱暴な警察に対してへりくだった態度を取ったり、警察に反抗するウェスやデールを強く叱る様子は、正直モヤモヤしたし、「ウワ嫌な奴だな~!」と思いました。(褒めてる)

デールと殴り合いの喧嘩をした後、自分を正当化して仲間から慰めてもらう様子なんかも「いや何被害者ヅラしとんねんコイツ…」と嫌な気分になりました!(とっても褒めている)

アップステアーズの中では多分最年長者ですが、精神的にはあまり大人じゃないんだろうな~と思いましたし、彼の嫌なところを見ながら「自分はどうか」と辛い気持ちになったり。でも、そうならないと、生きてこれなかったんだよね、わかるよダディ…。

 

ウィリー

岡さんといえば、'19年ロミジュリのキャピュレット卿、'21年ロミジュリの大公さま!特に、昨年の大公さまは見た目がイカツすぎて、とっても印象に残っています…笑

そんな岡さんが!楽しげなゲイ(オネェ?)をやると聞いて!!とっても楽しみにしていました。良くない訳がない。

結果、めちゃくちゃ好きなキャラクターでした。強くて可愛くてチャーミングなのよね…更に周りのことがよく見えてる優しい人…。彼のお陰でアップステアーズがうまくまとまっているのでは?感あるもんね…。

 

"Red shose"では、数少ない「頭空っぽで楽しめる曲」なので大好きです。コロナ禍じゃなかったら、皆で声あげて楽しみたいやつ…。お花とかお金とか投げ入れたい…(だめです)

でもウェスくんのスマホをぶっ壊した(?)のは良くないと思うよ…笑

 

デール

キャストが誰だかすっかり忘れて見に行ったので、途中で東山さんだと気がついて色々と衝撃でした笑。

オペグラを覗かずに見る私「デール、だらしなさそうな役どころの割にすげーキレキレに踊るじゃん…」

そりゃそうだよ!!東山さんだもん!!!

 

彼のキャラクターについては、こちらでなんやかんや語ってしまったのですが…。

「ある集団の中で認められたくて、彼らの役に立ちたくて、一生懸命できることをやろうとするけど、それがうまくいかなくて、辛くて、恨めしくて、どうしようもなくて…」

そんなシチュエーションにどことなく心当たりがある私は、デールのことを思うと、いたたまれない気持ちというか…

でもまぁ私は嫌な人間なので、「デールが悪いんだから、除け者でも仕方ない」という人の気持ちも分かってしまうので、なんというか、どうしようもない気持ちです…優しい人になりたいね…。

 

イネズとフレディ親子

このお話の中の数少ない良心…!(個人的な意見です。)

しょごたん(もう"たん"をつけて呼べる年齢でもないけどね…ついそう呼んでしまう世代です…)が出てるのを忘れて見てたら、随分話が進んでから"フレディ=しょーご"と気が付きました…笑

フレディは、ショートパンツにサラサラショートカットの可愛い声の子なので、本当に最初は女の子だと思いました…しょーごがやってたのか~、そりゃ間違えるわ~…。

筋肉質だがつるつるつやつやピカピカの御御足、しょーごがやってたなら女子と間違えても仕方ないね!だってしょーごだもんね!!

 

おそらくアップステアーズの中で一番若いフレディですが、若さならではの真っ直ぐさ・純粋さのある子でした。

彼が"ドラァグクイーン・オーロラ"としてやるショーも、とっても素敵でした!可愛いしカッコいい…最高…。もっと見たい。

 

彼の母親・イネズは、フレディのことを受け入れ、ショーのメイクや着付けを担当しています。

今の時代では「まぁそんな親もいるよね」と流してしまいそうですが、当時ではちょっと信じられないような存在ではないでしょうか。息子への愛、とっても深くて温かいなぁと感動してしまいました。

そんな素敵な母あってこその、この優しくて真っ直ぐなフレディがいるんだな、と思わざるを得ません。

イネズ、強くて優しい母……こんな人に私もなりたい……(遠い目)

 

考察:ウェスはタイムスリップしていたのか?

Introductionやあらすじなどを読むと、ウェスはタイムスリップしたのかな~?という印象を受けますが、実際見てみて「これはタイムスリップではない」と思いました。

 

演出的な観点になってしまいますが…

舞台冒頭の現代のシーンでウェスがラウンジ(だった場所)に入る前から、アップステアーズの人たち(の魂?意識?亡霊?)が、そこにいる…という演出がありました。

そしてストーリーの最後には、まるで成仏するかのように、明るい方向へ皆が去っていく…。("成仏"という言葉が相応しいのかは微妙ですね。ずっとこの場所に縛られている感じではなくて、たまたま呼び起こされただけ、な感じもしたので。)

 

それから、セリフの所々に"既に焼けている"ような描写もありましたね。(会話を聞いていると、噛み合わない箇所があったり。)

 

たぶんウェスくんは、今後彼らと過ごした時間を大切にして、目の前のこと、仕事とか取り組んで行くんだろうな~と思ったけど

もし新しいパートナーが出来たとして、時々パトリックとかのことを思い出すんだろうか…辛いけど…幸せになってほしい…

 

さいごに

本公演、2月27日まで大阪公演もあるよ~!と宣伝(?)するつもりだったのですが、

残念なことに大阪公演は中止になってしまいましたね…。

改めて、このご時世に無事公演が出来ることのありがたさを痛感します。

公式さんによると、今後東京公演の再配信等検討しているとのことですので、続報を楽しみに待ちたいところですね。

(※2022年2月23日時点の情報です。)

 

大勢の登場人物の笑顔の裏に、誰かの絶望を感じたりして、なかなか皆が幸せにはなれない「素敵な」舞台でした。

生きるって難しいけど、何かに気付ける人でありたいね。

この舞台やお話が、本当に大勢の人の目に触れたらいいなと思う舞台でした!再演お待ちしております!!!ありがとうございました!!!

 

 

~過去の観劇・参戦レポなど~

 

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